うときゅういっき夜話 第三回「悲しき推論」

コロナ禍防止のための「3蜜(密閉、密集、密接の3つの密)」で、ふと思い出したのですが、自分らが若いころは、カップルが並んで歩くといえば「腕を組んで」が一般的だったのですが、最近観察したところによると、そういったカップルは、殆ど絶滅危惧種になっている、どころか絶滅してしまったようです。

その代わりによく見かけるのが「手を繋いで」歩く姿です。

これは一見、微笑ましい姿に見えそうですが、自分の目から見ると上述の「3蜜」に出てくる「密」を避けるための高等回避手段のように思えてなりません。

そう思い始めたきっかけは、大学生同士と思しきカップルが駅の自動改札までは手を繋いで歩いてきたのですが、その後そのゲートを通るために手繋ぎを解いた後の姿を見て、そう思ったのです。

それというのも、手をほどいた後、彼女は彼氏の後をついて同じゲートを通るかと思いきや、いったん止まって考えた後、踵を横に向けて隣のゲートを通過し、その後、あたかも後ろを通ったかのように何食わぬ顔で、又彼氏と手を繋いだ光景を見たときからでした。

それを見て以来、腕組と手繋ぎの違いを考え始めました。

そうして思い当たったのが、腕組の場合お互いの体は密着するが、手繋ぎの場合は、肩から手先までの物理的距離の掛ける2倍分だけ、絶対にお互いはそれ以上近づけないという事実に気づきました。

「なぁんだ、仲よさそうにしていながら、相互に完璧な防御壁を作っているだけなんだ」

と。

そうしてこの隙間存在は、横並びの中での差から、今度は結婚後、奥さんがスマホを見ながら先頭を切って歩き、旦那さんが奥さんの影を踏まないように三歩下がって「妻の影を踏まぬよう」うなだれたポチが如くにベビーカーを押して歩く姿に変わっていくのではないだろうか?とも。

心ある人から見れば、観察による推論は、かなりえげつないものに映るかもしれませんが、自分の目には、そうとしか映らないのが、正直怖くもあり、悲しくもある次第でございます。