うときゅういっき夜話 第二回 「爆走、ド派手なお忍び戦車」

以前、自分が勤めていた会社の同期生の友人が、某国を訪れたときのお話。

その友人は、それまで赴任していた某国に久しぶりに仕事で「里帰り」し、郊外の民家で男女の楽しみを十分に満喫しすぎて、帰国の航空便に間に合いそうにもなくなった折、以前赴任していた某国の友人である陸軍将官に電話をし

「というわけで何とか帰りの航空便に間に合わせたいのだが」

と電話すると、頼んだ本人は陸軍御用達のセダンが横付けされると思っていたのですが、図らずも来たのはなんと戦車。

で、その友人の将官曰く

「近所で走っているのはこれだけだ。問題ない。裏はネゴってあるから乗って行け」

と。

で、その戦車は国道をキャタピラーの音高く、セダンに比して目方が重く、ガタイの大きな戦車としてはものすごいスピードである時速80キロ近い激速で「ええい、邪魔だ、下々の者ども、下がりおろう!!戦車様のおとおりだぁ!!」とばかりに「葵の御紋」を振り立てるが如く、某国のお上の権力を振りかざしながら爆走し、無事空港に時間内について、当該の友人は日本国内の役員会議に間に合ったとのことでした。

少なくともこの「ド派手なお忍び戦車」には戦車長、操縦士、砲手、砲弾装填手、機関士の5人くらいは乗り合わせている筈なので、5人分の「心づけ」(要するにワイロといいますか口止め料と申しますか)をはらってのことでしょうし、想像するに、当該の友人が大人しく戦車内に座っていたのか、それとも戦車の砲塔の上に立って、双眼鏡片手にイケイケどんどんサインを出していたのか?は定かではありませんが、兎にも角にも無事帰国。

で、当時うつ病病み上がりの回復期だった自分は、この話を聞いたとき「やはり役員まで行くやつは違うな」と思ったような記憶が。

ところが、この同期の友人は、その後、その会社で起きたある大事件で、その一端を担いだ不正が発覚して「失脚」と申しますか「塀の中」への招待状が来たと申すようなことに。

で、うつ病快癒後にこの話を耳にして

「やはり、戦車の件も含めて不正は不正。天網恢恢疎にして漏らさず、であるな」

等とは全く思わず

「いや~、あの話を聞いたときは実に痛快な思いであった。こういう「超法規的」ともいえる奇想天外な「羽目外し」こそ、今の我が国国民諸氏とっては、まずもって何よりも必要に違いない。

今度出所するときには、どうせ、の事なら、そんなところに知り合いがいるかどうかは全く知りもせぬが、いればその陸自幹部にでもお願いして、「オイ、すまんが、景気づけに一台回せ」とばかりに「陸自戦車」に出迎えに来させるのもオチがついていいかも、な」

と思った次第。

こんなことを言うと、どうせブーイングの嵐でしょうが、現下これが、自分の偽らざる感想でございます。